もっと人間関係力を高めたいあなたへ、パフォーマンス心理学博士が贈る聖書のことば
佐藤綾子の
人とつきあう聖書の知恵
第34回
プロフィール
佐藤綾子(さとうあやこ):
日本大学藝術学部教授。博士(パフォーマンス学・心理学)。信州大学教育学部、ニューヨーク大学大学院パフォーマンス研究学科卒業。上智大学大学院文学研究科博士課程修了。1980年、日本初のパフォーマンス学創始。以降、各種ビジネスのブレインとして幅広く活躍中。著書150冊。最新刊『日経 WOMAN 元気のバイブル』(日経ビジネス人文庫)、『なぜあの人は尊敬されるのか』(中経出版)、『新版 かしこい女は、かわいく生きる。』(PHP研究所)。「佐藤綾子のパフォーマンス学講座(R)」を主宰。社団法人パフォーマンス教育協会(国際パフォーマンス学会)理事長。
ホームページ=http://www.spis.co.jp/
同僚とのつきあい方
検察庁で組織ぐるみのデータ改ざんの不正があったり、相撲部屋では組織ぐるみの賭博の横行があったり、2010年は同じ職業の人が集まっている組織のなかでの不正が目立った一年でした。なぜそうなるのでしょうか?
パフォーマンス心理学の重要なキーワードに、「社会的アイデンティティ」ということばがあります。人々がその人の所属する社会的カテゴリーから、大部分そのアイデンティティ(自己の意味や自己の概念)を引き出しているという考え方です。
だから、相撲集団にいる人はお相撲さんらしく、検察集団の人は検察官らしくなるというわけです。とはいえ、同じ集団のなかだって厳密に全員が金太郎飴とは限らないのですが、それでも価値観が似ていて話しやすく、外部的にまずいことがあれば、一緒になって隠したりしがちです。
さらに困ったことに、ひとつの業界の価値観、情報だけに凝り固まり、同じ集団内でも自分と異なる人を受け入れたり、異なる人から学ぶという姿勢が少なくなりがちです。自分と同じ価値観を押しつけたり、自分と違う言動をする人をハネつけたりする悪い癖も出てきやすくなります。
自分よりはるかに頭や容貌の良い人をねたんだり、自分より何もかも劣っている人をバカにしたりして、「なんでも自分と揃うこと」を求めていく傾向も強くなります。教会も例外ではありません。
そこで、聖書には仲間や教会員と付き合うときの素晴らしいヒントがあります。
「一つのからだには多くの器官があって、すべての器官が同じ働きはしないのと同じように、大ぜいいる私たちも、キリストにあって一つのからだであり、ひとりひとり互いに器官なのです」(新約聖書・ローマ人への手紙一二章4、5節)
(中略)「兄弟愛をもって心から互いに愛し合い、尊敬をもって互いに人を自分よりまさっていると思いなさい」(同10節)
相手は自分とはずいぶん考え方も条件も違うけれど、自分より勝っている何かを持っているのではないか、そう思って人を見ることができれば、相手を尊敬できます。
あるいは、相手は自分のできるようなことはまったくダメだけれど、自分とは別の種類の才能を持っているのではないか、と思って目を凝らしてみると、その人はおもしろい才能をいろいろ持っていたりもします。何をしても頭の回転が遅くてイライラすると感じた相手に、何かのときに、ホッとするひと言をもらったりすることもあるでしょう。
一生の間に自分と違う人をどれだけたくさん心に受け入れていくか、結局、そんな気持ちが同僚や仲間とうまくやって、人生を豊かにする鍵になるでしょう。
私が好きな金子みすゞさんの詩「私と小鳥と鈴と」のなかに、「みんなちがって、みんないい。」という有名なことばがあります。なんと優しいことばでしょうか。これは、私のパフォーマンス学三十年の信念でもあり、クリスチャンとしての私の毎日の目標でもあります。
同質の人を受け入れるのは簡単。でも異質の人に心を開いていく一年であれば、この一年でもあなたのおつき合いはぐんと広がることでしょう。