もっと人間関係力を高めたいあなたへ、パフォーマンス心理学博士が贈る聖書のことば
佐藤綾子の
人とつきあう聖書の知恵
最終回
プロフィール
佐藤綾子(さとうあやこ):
日本大学藝術学部教授。博士(パフォーマンス学・心理学)。信州大学教育学部、ニューヨーク大学大学院パフォーマンス研究学科卒業。上智大学大学院文学研究科博士課程修了。1980年、日本初のパフォーマンス学創始。以降、各種ビジネスのブレインとして幅広く活躍中。著書150冊。最新刊『日経 WOMAN 元気のバイブル』(日経ビジネス人文庫)、『なぜあの人は尊敬されるのか』(中経出版)、『新版 かしこい女は、かわいく生きる。』(PHP研究所)。「佐藤綾子のパフォーマンス学講座(R)」を主宰。社団法人パフォーマンス教育協会(国際パフォーマンス学会)理事長。
ホームページ=http://www.spis.co.jp/
男の嫉妬、女の嫉妬
私たちが毎日の人間関係を築いていくときに関わってくる、あらゆる感情のうち、「嫉妬(jealousy/envy)」ほど厄介なものはありません。福沢諭吉先生も『学問のすゝめ』で、「およそ嫉妬ほど厄介な感情はない」と書いています。聖書にも「ねたみ」ということばが、繰り返し使われます。
旧約聖書にヨセフと兄弟の物語が描かれています。そこに「兄たちは彼をねたんだ」(創世記三七章11節)とあります。ヨセフの持っている能力や、これから持つであろう権力に対して、兄たちがねたんだものですが、どうやら男の嫉妬には、このように権力、あるいは能力に関するものが非常に多いようです。
会社で自分より出世する人や、同級生で一人だけ抜きん出て成績がいい人などに、男性たちは嫉妬心を持ちがちです。時にはこの感情が、大学の教授会ですら、厄介な揉め事の火種になったりします。
この嫉妬の感情は、人間にとってあまりにも強いからでしょうか、こんな英語の文章があります。
"He is green with jealousy."直訳すれば、「彼は嫉妬で緑色になっている」となります。日本なら、彼は嫉妬で何色になっていると言うのでしょうか? 真っ赤、真っ青が浮かびます。嫉妬で緑になる。それほど私たちは、嫉妬という感情に振り回されてしまうのです。
ところが、「女の嫉妬」となると、少々原因が違うようです。有名なのはグリムの『白雪姫』。地位や権力、お金、すべてを持っているお妃さまが、「だれが世界で一番美しいか?」と魔法の鏡に聞いたとき、鏡は残酷にも「それは森のなかの白雪姫」と答えるのです。そこで、お妃さまは白雪姫に毒の林檎を食べさせて、殺してしまいます。「美」に対する嫉妬です。
同じグリムの『シンデレラ』にも、同じモチーフが出てきます。継母に育てられている末娘のシンデレラ(「灰かぶり娘」の意味)は、とても美しく、その可憐さを姉たちがよく思いません。そして、いつもいじめてばかりいます。
その白雪姫が舞踏会で王子様と巡り会い、結婚して幸せになります。ここで嫉妬されているのは、シンデレラの能力や権力ではなく、「美しさ」です。
どうも女性は、美しい同性に嫉妬の感情を抱きやすいようです。しかも、これまた現代に至っても、ちっとも変っていません。職場や学校であまりにも美しい女性は、何かと嫉妬からくる意地悪の対象にされがちです。
けれど、これらの男の嫉妬・女の嫉妬に対して、有名な“愛の書”コリント人への手紙では、バッサリとこんな風に言うのです。
「愛は寛容であり、愛は親切です。また人をねたみません」(新約聖書・コリント人への手紙 第一 一三章4節)
パウロは、私たち人間にとって最も大切なのは愛であると結論し、「私たちの心に愛があれば、人に対して寛容であり、親切であり、自慢もせず、高慢にもならない。また人をねたまない」と言っているわけです。「ねたみ」が私たちの心を縛り、支配しやすい深刻な感情だということがわかります。
素晴らしい人、美しい人、できる人を見たら、盛大な拍手を送って、一切ねたまないという習慣をつけたら、皆どんなに平安になることでしょうか。